AndanteLargo Standard アンダンテラルゴの音質評価スケール

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 アンダンテラルゴでは大きく分けて3つの音質評価スケールを自社製品の開発、輸入製品の評価、オーディオシステムのセッティング等に一貫して採用しています。

なぜ、そのようなスケールを設けるのか?

 メーカーとして「良い音」を提供するにはまず、どういった状態が「良い音」なのか?という明確な基準を定める必要があります。そして ( 漠然とした「感覚」ではなく ) その基準をもって設計・選定した製品のみラインナップしてこそ、安心して弊社取り扱い製品をお選びいただけると考えております。

 下記3つのメソッドは弊社内だけのものではありません。皆様が機器の試聴をされる際はもとより、ご自身のシステムのセッティングやグレードアップの参考としてもご利用いただければ幸いです。

① 「楽器と楽器」のセパレーション
② 「一音一音」のセパレーション
③ 「高い音と低い音」のセパレーション

① 「楽器と楽器」のセパレーション

 システムをセッティングするにあたり、楽器の前後・左右の位置や存在の明確さをリアリティとして追求する人は少なくありません。しかし弊社の考えとしては、それはあまり問題ではないのです。

 これには反論される方もいらっしゃると思いますが、例えばギターでも、生の本当に良い楽器を自然な環境の中で弾いてもらい目をつむると、どこで演奏しているのか、どこに楽器があるのか、サウンドホールがどこにあるのか、意外と分からなくなるものです。ピアノも同様で、良いコンサートホールではピアノ自体から音が聴こえるというよりも、その部屋の空気全体に音が満ち満ちているのです。そこには美しい音色と豊かな響き(倍音)が聴こえています。要するに本来の「自然な音」は楽器の位置がはっきりとしない事が多いのです。

 ところがひとたび、オーディオシステムから音楽を鳴らすと「あの人はここで歌っている」とか「Aの楽器はあそこで、Bの楽器はここにいる」とよく言われます。私どもにとってそのような音の出方は、十分な倍音が出ていない状態だと考えます。本当の生音に近くなればなるほど、案外はっきり「ここ」とか「あそこ」が重要ではなくなる。むしろそちらの方が本来の姿に近い自然な音と考えています。

 もちろん精度が上がると指で指せる、場所がわかるということは、決して間違いではありません。ただ問題なのは、そのことばかりを追求していくと、とても不自然な音に陥ってしまうことなのです。

 そこで私どもが重要視していることの一つは、楽器間のセパレーションです。例えば一般的なオーディオで3重奏の曲を聴いてみますと、それぞれの楽器の音が折り重なって聴こえることがあります。また小さな音量の伴奏旋律が、大きな音量の主旋律にかき消されている、というケースもよくあります。絵画で言えば、壁に掛った複数の絵がお互いに被さって見える状態で、非常に不自然です。絵画の世界ではそうないことですが、これが音楽再生の世界ではよく発生しているのです。

 ジャズトリオのピアノ・ドラムス・ベースも、全てがまとまって聴こえるのではなく、ピアノはピアノで独立して聴こえ、ドラムはドラムで手に取るように聴こえ、ベースはベースではっきりと旋律を奏でてこそトリオの演奏になります。それでこそ、彼らが3つの異なる楽器と旋律を受け持つ意味があるのです。
 
 ビッグバンドの演奏でも、ブラスが大音量で鳴る中に1本のアコースティックギターがいるならば、例え小さな音であっても、はっきりと聴こえてほしいのです。作曲家は最も目立ちにくいパートにも、そのささやかな旋律が必要だからスコアに書いています。ですから、音量の大小にかかわらず、楽器同士の音は「被らず」明瞭に再生されなければならないのです。

② 「一音一音」のセパレーション

 もうひとつ大事なセパレーションは、一音一音がその前後の音とは別々に、はっきりと聴こえることです。例えば、スラー記号でもない限りは「ド・レ・ミ」という様に聴こえるのが理想です。ところがちょっとでも再生音の歪みが増えると、一気に「ド〜レ〜ミ」とみんなつながってしまう。このセパレーションも、私どもは非常に大切であると考えています。

 優れたクラシックギターの演奏では、1つの音を出した後、次に弾く弦は一度しっかりと指でグリップ(音を止める)してから次の音を出しています。それは「ドレミ」ではなく、「ド・レ・ミ」という具合です。テンポが早くても遅くても「ド・レ・ミ」と弾いています。それによって本当に一音一音がとてもきれいに響くのです。(それを完璧に実践した巨匠が、アンドレス・セゴビアです。ゆったりとした曲でも、超絶技巧の速い演奏でも、一音一音をはっきりと奏でています。グレン・グルドも一音一音を切って、むしろ強調し過ぎな程に弾いています。だからこそ、彼らの演奏はとても速いフレーズでも一音一音が明瞭に、美しく聴こえるのです。)

 オーディオの場合も全く同じだと思います。例えばしっかりとグラつかないようにセッティングされたスピーカーから、素晴らしい再生音が奏でられていたとします。そこであえて僅かなグラつきをスピーカーと床との間に与えてみますと、それだけでもう音が繋がり合い、到底美しい音とは言えない状態となります。

 一音一音を明瞭に再生すること、これは優れた演奏家の技術・情熱を忠実(=Hi-Fidelity)に再生するために、欠かせないポイントなのです。

③ 「高い音と低い音」のセパレーション

 次は、「高い音と低い音」のセパレーションです。「高い音」や「低い音」という言葉はいつごろから使われ始めたのでしょうか?英語でも高い音をHigh noteまたはHigh frequencyと呼んでいます。きっと古来より使われてきた言葉だと思いますが、言語の違いに関係なく、自然と高い音は上の方から聴こえる様に感じ、そのままに表現してきたのでしょう。これは私達ヒトが生まれながらに持っている素晴らしい感覚だと思います。ですから最も歪みが少なく自然に近い音は、高い音が上の方から聴こえ、低い音は地を這うように下の方から聴こえるのです。

 同様に、優れたオーディオでは「高い音」はスピーカーより遥かに高いところから、「低い音」はずっと低いところから聴こえてきます。逆に、少しでも歪み等のあるシステムでは「高い音」も「低い音」もみなスピーカーキャビネットの辺りからしか聴こえなくなります。また高音、低音が中音帯域に寄った「団子状態」も、受け取り方によってはパワフルに聴こえることで「良し」される事もあります。しかし上記の考えに当てはめてみれば、本来の音楽の姿ではないと思うのです。

 試しにお聴きいただきたい曲は、パガニーニの24のカプリース 第5番です。ヴァイオリンの旋律が低い弦から徐々に上がり、もっと上がり、またもっと上に……という美しいフレーズがあるのですが、それを聴いてみますと、音階の上がり下がりの感覚がとても良く理解できると思います。

 高い音はより高い所から、低い音は地を這うようにより低いところから響く・・・それでこそ、音楽で最も大事な要素の1つである「コントラスト」の美しさを存分に享受できるのです。

メソッドに耳を集中させ、僅かな音の違いを判断する

 私共は製品開発に際して、多くの選択肢の中から最善のものを選定します。例えば5種類の素材を比較して良いものを選ぶ時、想定される特性ではなく、先入観のないブラインド試聴のみを唯一の方法としております。

 実際の製品を例にとりますと、スパイク受けのサイレントマウントを設計するにおいては、非常に複雑な組み合わせで数10通りの試作品を作り、ベストを選びました。

 またリジッドタワーの天板のくり抜き形状、材質と接着剤の選択の際も、30種類以上の試作を行いました。特に真ん中の穴のくりぬき形状に至っては最終的には1㎜ステップで追い込んだものもあります。

 このようなことを第三者の方にお話しすると、「そんな微妙な差がわかるのか?」と言われます。実際、数値上では僅かな違いしか無いと思われる比較もあります。しかし下記の3つのポイントに集中して聴き比べると、ごくわずかな差でも非常に大きくクローズアップされて良否の判断が出来るのです。

① 「楽器と楽器」のセパレーション
② 「一音一音」のセパレーション
③ 「高い音と低い音」のセパレーション

 ぜひ1度、お試しください。


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